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解説:タペット/バルブクリアランス調整


さて、
本日、シリンダースタッドの増し締めをするタイミング。
先日bobさんからご依頼の「バルブクリアランス」またの通称を「タペットクリアランス」=以降 "バルブクリアランスと呼びます"の調整について、もっと詳しく!ってな事で、ここで「素人の素人による素人のための」おせっかいすぎるほど親切な解説を致しますw


まず、機械いじりは道具あってなんぼです。
バルブクリアランス調整に必要な工具一式

・ペンライト
・シックネスゲージ(0.10 - 0.15 - 0.20 - 0.25 が網羅されているもの)
・六角ソケット(12mm 13mm 15mm)*12角ではなく六角推奨
・ラチェットレンチ
・トルクレンチ(10Nm〜35Nmが網羅されているもの)
・コンビレンチ(10mm 12mm)
・プラグレンチ
・ゴムハンマー
・エクステンション(10cmか15cm程度)写真なし


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ここでいきなり、
恩着せがましいお勉強タイムw


本来で言えば、バルブクリアランス調整=タペットクリアランス調整、すなわちカムとタペットのクリアランスを調整するのが目的。

フツーのDOHC(ダブルオーバーヘッドカム)エンジンでは、BMW R100などのOHVとは違い、
バルブを押し開けるタペット&カムはバルブの上にある。
すなわち調整する部分はカムとタペットの隙間である。

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いっぽう、我らがOHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンは・・・
カム山バルブリフター(別称 カムシャフトフォローワー)を押し、プッシュロッドを押す
プッシュロッドが上がりロッカーアームを突き上げる
ロッカーアームがリフトしバルブをプッシュして開く

OHVの基本構造(カムが腰下にある)

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OHVの場合は、カム山がDOHCでいうタペット的なバルブリフターを押す。
という事で、OHVのバルブクリアランス調整というのは、調整する部分はバルブエンドとロッカーアームのクリアランスだが、厳密にはDOHCエンジンと同じように、プッシュロッドの奥で行われている、カムの山バルブリフター"アタリの遊び"を調整している事でもある(たぶん)

フツーはタンク外して、あれやこれやと面倒なクリアランス調整も、ボクサーエンジンなら、R100は 2バルブに加えヘッドが横置き、バルブ周りのメンテナンスは、最強に楽ちんアクセスなのである。



お勉強終わり。



それでは作業開始!

作業手順はオーナーそれぞれに自己流があるかと思いますので、ここはmoto流でご説明します。
まず、バルブクリアランス、すなわち、ロッカーアームがバルブステムをプッシュする「遊び」を調整するものなので、まずはシリンダー内のピストンを上死点(吸排気バルブが全閉)の状態にしなくてはいけません。

*上死点は、左右同時には出ません。
つまりは、片方ずつ上死点を出して作業します。
motoの場合は、まずは左右のヘッドカバーを外しておく事から作業は始まります。

上死点を出すには、手動でホイールを回してクランキング(クランクを回してピストンを動かす!)する必要があるので、シリンダー内の圧縮を抜いて回転を軽くするためにプラグを外しておきます。

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続いて、ヘッドカバーを取り外します。
ヘッドカバーは3個ナットで取り付けてあります。
まず裏側の前後にある10mmナット2つを外します。

まず前(排気側)10mm

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後ろ(吸気側)10mm
順不同です。(デフォルトではワッシャもありますので忘れずにピックアップ)

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続いて、ヘッドカバーの下に適当な お皿(布でもいいよ)をスタンバっておきます!
これがあるとないとでは、作業スタートの時の心の余裕に差が出ますw

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こんな具合にお母ちゃんに内緒で、台所からテキトーな皿を持ってきましょう。皿が用意できたら、
ヘッドカバーを指で押さえながら、センターナットを外します。13mmです。

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センターナットの後ろには、ワッシャーが入っていますので、これの救出を忘れずに!
*motoはよく忘れて、どっかへいってしまいますw

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指で押さえていたヘッドカバーから、オイルが少量お漏らししてきます。(これ正常反応です)
逆にオイルが全く垂れない場合、それはそれでエンジンに別の問題が起きていますので、バルブがどうのこうのの前に、オイルラインをチェックする事になります。


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さっきお皿を用意したから、地面は汚れませんw(motoはかなり汚しています)
漏れても数ccです。(もし何リットルも漏れたら、バイク屋に行きましょう)

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オイルの垂れが止まったら、ヘッドカバーを外します。
本日のメインエリア、ロッカーアームのお出ましです。


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ヘッドカバーを外したシリンダーヘッドには、オイルの垂れ残しがあるので、拭き取っておきましょう。

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この作業を、反対側のシリンダーヘッドでもやっておき、左右のロッカーアームを丸出しにしておきます。

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さて、第一段階の準備ができました。

しばらくぶりの場合は最初に、シリンダーヘッドのスタッドボルトの締め付けトルク確認(増し締め)を行う。

上死点出ししてからやるのが良いですが先に説明しておきます。

エンジンブロック〜シリンダー〜ヘッドまでを外周4本のスタッドで、シリンダー〜ヘッドの連結は上下2本のボルトで留まっています。

もしこれらが規定トルクより緩んでいる場合は、バルブクリアランスを調整したところで無駄骨です。
15mmソケットで、15Nm→25Nm→35Nmの3段階締めが基本ですが、増し締めであれば最初から35Nmで以下の順で締め付けで良い。
*ここでは「縦方向のスラストクリアランス調整」は一端省きます。後ほど説明します。

必要工具に書き忘れましたが、5-6のスタッドは少し奥にオフセットされていますので、アクセスするのに10cm-15cmくらいのエクステンションがあると良いです。


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次はバルブクリアランス調整に避けては通れない、上死点の出し方です。

上死点を出すには、前述した通り、クランキングする必要があります。
クランキングとは、ギアの入った状態で、手動でクランクを回転させ、ピストンやバルブを動作させる(つまりエンジンが動いている状態と同じ)事です。
このクランキングにより、片方のシリンダーを上死点にもっていきます。
説明するとややこしいですが、実作業はmoto-binsでの買いだめを奥さんに説明説得するよりよっぽど簡単です。

作業は両手を使います。
まず左手でシフトレバーを持ち、右手で後輪のホイールを持ちます。
シフトレバーをガチャガチャしながら(アップしながら)


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後輪をヨイショヨイショと回して、ギアを5速まで入れます。


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なんで5速なのかというと、手動で回すのに、一番クランキングが軽くなるからです。
あ、腕力に自信のある方なら、どうぞ1速でやってくださいませw

手動クランキングの準備ができました。

次にエンジンブロック左側(オイルフィーラーの隣)にあるタイミングホールのキャップを外します。



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中は真っ暗ですw
ペンライトをあてると、フライホイールの円周がうっすら見えると思います。



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万が一、穴からトトロが見えたら、すぐにバイク屋へ、いや、ジブリへ、いや、あなたが病院へ行ってください。



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左手でタイミングホールにペンライトをあてながら、右手で後輪を回してフライホイールを回します。
ニュートラルではなくギアが入っていますので、当然クルクルとスムーズには回転しません。
カクカクと強引に押し回します。(これがクランキング)



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クランキングを始めたした時のフライホイールの位置にもよりますが、Zマークが最初に現れる場合もあります。
そこは無視して、まだまだ回します。



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このあたりはクランキングが軽くなるので、スコ〜〜ンと回し過ぎないように力量調整してください。

やがて、同じラインにOTマークが見えてきます。(見落とししないように注視する)
このOTマークの上の線と、エンジン表の切り線を水平に合わせます。(少し行きすぎたら逆回しして)



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これで、左右どちらかに上死点(ピストン再上昇&吸排気バルブ全閉状態)が出ています。


さて、右か?左か? どちらが上死点なのか、見極めなくてはいけません。
先ほど素っ裸にした、ロッカーアーム一式を左右確認します。


上死点が出ているかどうかは、このように確認。(動画)
左右のロッカーアームを指で動かしてみて、カタカタと動くどちらか(右か左)が上死点が出ている(吸気&排気バルブが閉じきっている)事になる。








その時 反対側は、上死点が出ていないので、
このようにロッカーアームにクリアランスが無く動かない。(動画)










ということで、上死点が出ている方(カタカタする方)から作業します。
今回は左側からです。

ちなみに、クリアランスがつまり切っていますと、左右どちらもカタカタいわない場合があります。
左右どちらかの、バルブスプリングの押しの弱い方のロッカーアームのロックナットを緩めます。


前座です。
この時点で、ロッカーアームの縦方向(スラストクリアランス)のガタがある場合は対処しておきます。

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ここの隙間が多すぎると、ロッカーのベアリング破損など、将来よろしくない事がおきます。
クリアランスの許容は0.05mm ±0.02です。
今回吸気側に少し隙間でてました。0.10が入ってしまいます。
ここの隙間をつめるには、広い場合はシムを入れますが、今持ってません。


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スタッドを少し緩め、ロッカーアームホルダー(上の四角いヤツ)を上下からゴムハンマーや指で押し縮めて、なるべくガタを無くてスタッドのナットを締め込みます。


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指はさみでも、慰め程度ですが、多少はクリアランスをつめられます。
Cクランプなんぞ使うのは強引すぎるのでしょうか。。。
次回はシムを用意してきっちり詰めましょう。


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ロッカーアーム縦方向のクリアランスを確認調整したら、バルブクリアランス調整へうつります。

ロッカー全体の解説です。


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これから調整するのは、ここの隙間です!


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ここから両手が塞がるので、先にトルクレンチを20Nmにセットしておきます。


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上の図解のように、バルブクリアランス調整は、吸気側と排気側の両方を行います。
ここからは動画で説明!!しまっす!

まずIn側(吸気側)0.15mm調整します。*シックネスゲージには薄くオイル塗っておきましょう。
タペットノイズが気になる場合は0.10でもOKですが、motoは広めの方が乗り味が良いので。






ちょっと鼻息が荒いですね。。。
まあ、目をつむってやってください。


続いてEx側(排気側)0.20mmに調整。(同じくノイズ気になる場合は0.15mmでもOK)
締め付け部分は割愛。







やっぱり鼻息が荒い。。。


左側は完了したので、ヘッドカバーを戻します。
パッキンの密着が良くなるように、パーツクリーナー等で脱脂します。


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錆やパッキン剥離痕などある場合は磨いて面取りしておきます。
motoはパッキンをシリコン製に変えています。痕が全く残らず何度でもリサイクルができるので、頻繁にヘッドカバーを開ける人にはお勧めです。ビーマーさんで扱ってます。安いです。


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パッキンを挟み、ヘッドカバーを取り付けて、外した3つのナットを締め込みます。
締め付けトルクはパッキンの種類によります。
センターナットは紙製パッキンの場合は24Nm / シリコン製の場合は8Nm程度


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続いて反対側(右側)の上死点を出します。
再びタイミングホールを注視しながら、もう一度後輪を回して手動クランキングさせ、フライホイールを1回転させます。



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フライホイールが1周して、再びOTマークが出てきます。
これで今度は今までと反対側(右側)が上死点になりました。

ちなみに1周目を見失い、2周してしまうと、上死点は先ほどと同じ左側に戻りますので、もう1周やりなおし。


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あとは同じ手順です。
反対側も一連の流れを動画撮りましたので載せておきます。







もう!鼻息気になる!!!




これで左右のバルブクリアランス調整終わりました!

ヘッドカバーを左と同じように戻し・・・・


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タイミングホールを塞ぎ・・・・


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プラグを左右戻し:カッパーグリースを塗って:(まず手回し)


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続いてレンチ締め・・・


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プラグキャップを戻して終了!


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あ、5速に入れたギアをニュートラルに戻すのを忘れずに!
忘れてセンスタ下ろすと、転けますww

これで、全ての作業が完了です。
いつでも乗ってくださいませw


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以上、素人の素人による素人のための、バルブクリアランス調整メソッドでしたw
やりかたは人それぞれ、「おいそりゃ間違いだぜ」なんて事もあるやもしれません。。
そんな時はご指摘をw 記事を正しく訂正直します。


すぐさま乗って調整後の感じを確認したいところですが、何事も焦ってはいけませぬ。
日が暮れそうなので、愛犬の散歩でもする事にしますw


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★自信もってオススメ!




Twitter ID Bonne38 (記事更新をツイートしてます)



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by moto-rs | 2016-01-04 02:25 | メンテナンス